【獣医の解説】犬の夜鳴き(夜泣き)を放置はダメな理由〜犬の夜鳴き(夜泣き)の原因と対策まとめ〜

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こんにちは、臨床歴10年の獣医師ゆうです!

愛犬の夜鳴き(夜泣き)がはじまってしまい

このまま放っておいていいの?
放置するとどうなるの?
動物病院に連れて行ったほうがいいの?


と悩んでいませんか。

実は、
犬の夜鳴きには必ず原因があります。
その原因をみきわめて
適切な工夫や対策をおこなうことで
夜鳴きをやわらげたり、無くしたりする
ことができます。

なぜなら、
実際の多くの動物病院の現場や僕の経験上、
有効な対策をちゃんと実施すれば
夜鳴きがよくなる子が多いからです。

この記事では
犬の夜鳴きを放置してはダメな理由
原因と有効な対策、
やってはダメなこと、
動物病院に連れて行くタイミングについて
わかりやすく解説しています。

この記事を読み終えると
愛犬の夜鳴きの原因がわかり
獣医が認める有効な対策を実践できるようになり
夜鳴きを改善することができるでしょう。

目次

1.犬の夜鳴き、放置は絶対ダメな理由

まず知っておいてほしいことは、
犬の夜鳴きがはじまったら
少しでも早く
夜鳴き対策をしてげたほうがいいということ。

というのは、
犬の夜鳴きの原因では認知症が最も多いのですが、
対策や治療を始めないと
どんどん進行、悪化し
手遅れになって手がつけられなくなるからです。

実際に、
夜鳴きがはじまってから
長期間にわたって有効な対策をしなかった子が
治療を開始しても
改善が少ないことが多いです。


夜鳴きも、
認知症も、
ほかのどんな病気も
よくするためには
早期発見、早期治療が大事なんです!

2.犬の夜鳴きの原因7つ

①要求(食べ物、水、トイレ)

夜の間に空腹やノドが乾くことで
目が覚めて夜鳴きをすることも。

また、高齢で足腰がよわって
うまくトイレに行けないために鳴くことも。

②視覚や聴覚の衰えからの不安の増加

犬も高齢になると視覚や聴覚もおとろえてきます。

すると住み慣れたおうちであっても
不安に感じることが多くなり
とくに夜中は暗い中で目が覚めると
不安感が増して夜鳴きにつながることも。

※だからといって夜も部屋を明るくすると
睡眠リズムがくずれ、夜に起きやすくなるので要注意!

③寒さによる覚醒

寒さから、うまく寝つけず夜鳴きをすることも。

とくに高齢の子では、
筋肉や脂肪が少なくなるので
体温を保つのがむずかしくなります。

④尿意、排尿の回数がふえる病気

膀胱炎になると、
何回もトイレに行きたくなります。

また、
飲水量がふえる病気(腎臓病、糖尿病やクッシング症候群など)
になってしまうと
その分、おしっこに行きたくなる回数も増えます。

⑤認知症

夜鳴き(夜泣き)の原因の中で、
もっとも多いでしょう。

そもそも犬の認知症はかなり多い

実は、
犬の認知症の発症率は驚くほど高いです。

11〜12才では 28%
15〜16才では 68%

と報告され、
飼い主さんも気づいていないことも多いです。

犬の認知症の見分け方

犬の認知症で起こりやすい症状を示しますね。

いろんな症状があるのですが、
ひとつでも心当たりがあれば
次の段落の診断方法を
実践してもらうことをオススメします。

  • 入口をまちがえ、ドアではないところから出ようとする
  • 徘徊する
  • 部屋のかどや家具の裏にはいりこむ
  • 散歩に行って戻れない
  • 呼びかけに反応しなくなる
  • 食事の要求をくりかえす
  • 昼間に寝て、夜に活発になる
  • 1回の睡眠時間が短く、夜に頻繁に起きる
  • トイレの失敗
  • 命令に従わない
  • ぐるぐる回る(円を描くように)
  • ものをずっとなめる
  • 空中や物体をみつめつづける
  • 攻撃的になる
  • ほえることが多くなる
  • 刺激に対して反応が弱い
  • ずっと寝ている
  • いろんなものへの興味がなくなる

診断方法

内野式100点法が日本では有名です。
10個の簡単な質問に点数をつけてもらい、
100点中、50点以上で認知症と診断されます。

内野式100点法

https://blog.nagoyamirai.jp/wp/wp-content/uploads/2017/08/fb0eb15ddb3cd81100d8a072a9297825.pdf

2分くらいでできますので、
一度チェックを。

⑥いたみ

体の様々な痛みから眠りが浅くなり、
夜中に目が覚めやすくなることも。

とくに、老犬で多いのは関節の病気(変形性関節症など)。
日本大学の調査では
10歳以上の犬の
44%もの割合
異常が認められています

体の様々な痛みから眠りが浅くなり、
夜中に目が覚めやすくなることも。

とくに、老犬で多いのは関節の病気(変形性関節症など)。
日本大学の調査では
10歳以上の犬の
44%もの割合
異常が認められています。

犬のいたみには気づきにくいのですが、
こちらの症状があれば要注意。

https://dourinken.com/wp-content/uploads/2019/05/itami_check2014.pdf

引用:動物のいたみ研究会HPより

⑦病気による不安

何らかの病気になると不安に感じて夜鳴きをすることも。

とくに多いものを2つ紹介します。

脳腫瘍

犬では脳腫瘍の発生率が人よりも高いと考えられています。
認知症と似たような症状を示すことも多いので、
見わけるには注意が必要です。

甲状腺機能低下症:ホルモンの低下が神経系に影響かも

高齢犬にとても多い病気です。
甲状腺ホルモンが少なくなり
神経系に影響を与え
不安を感じやすくなる可能性があります。

3.犬の夜鳴きに自宅でできる対策

①要求に答える

フードを遅い時間にもあげる、お水を切らさないように。
ただし、飲水量が増えていて欲しがる場合には病気に注意。

トイレには寝る前や、遅い時間にも行ってあげて。
関節や体が痛い、
目が見えにくくて
うまくトイレに行けないことも。

ただし、以前より尿の回数や尿の量が増えている場合には
獣医さんに。

②そばにいてあげる

目や耳がよわり、不安感が高まり
夜中に飼い主さんを求めて鳴いている場合、
そばにいてあげることで
安心感を与えることができます。

③ねる場所を快適に、あったかく

寒さによわくなる高齢犬は、
とくにあったかくしてあげてください。

ふかふかのベッドや毛布、暖房もしっかり。

寝床を新しくする場合には不安に感じるので、
においのついたタオルや毛布も入れておくと良いでしょう。

④尿の症状をチェック、飲水量も

夜中に尿意で起きてしまう子は、
病気のうたがいがあるので、
動物病院へ行くべきです。

1日の尿の回数や
1日の飲水量を測っておくと
獣医さんの診断の助けになります。

⑤認知症に有効な対策、治療

有効な対策、治療法

もし愛犬が認知症になっても
できることは4つ。

  • 栄養療法
  • 環境への配慮
  • 脳トレ
  • お薬

厳密には認知症を治すことはできないのですが
夜鳴きなどの症状をやわらげたり、なくすことも
できます。

専門的な研究などで効果が認められているもの、
僕の経験上でも効果があったものを中心に
紹介しますね。

もちろん、
認知症も一種の病気ですから
獣医さんと相談しながら最善の治療法を選ぶのがベストでしょう。

より詳しくは、こちらのブログ記事で
認知症の治療法を解説しています。

栄養療法(認知症対策のサプリメント、フード)

もっともオススメです。

抗酸化成分入りのフードやサプリは、
認知症の原因の1つである
脳の酸化ストレスをやわらげるはたらきがあります。


僕の経験上、
かなりの割合で改善を実感しています。

おすすめの認知症対策サプリ

VetPlus AKTIVAIT(アクティベート)

DHAやEPAなど7種の抗酸化成分が配合。
学術的にも犬の認知症に対する効果が示されています。
個人的に使うことが多いサプリです。

ただ、動物病院でないと手に入れるのは難しいかも。


http://www.world-equips.com/

メイベットDC(明治製菓ファーマ)
 同じくDHAやEPAを配合した認知症対策のサプリです。
 比較的に手に入りやすいと思います。

https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/animalhealth/ca/owner/supplements/MEVDCI.html

おすすめの認知症対策フード

ヒルズ サイエンス・ダイエット〈プロ〉 ドッグフード 健康ガード アクティブシニア シリーズ

とくに持病がなく食事の制限がない子や、
これから認知症が心配な7歳以上のシニア犬は、
効果が示された認知症対策のフードもおすすめです。

PURINA ニューロケア

動物病院でしか取り扱っていない商品です。
ちょっとお高いのがネック。

環境への配慮

かんたんにいうと
老犬にやさしく、暮らしやすい
環境、家にしましょう

ということです。

なぜなら、
老犬になると足腰が弱り
トイレに行きたいけど移動がつらいなど、
日常生活でのストレスが増えます。

その結果、脳がストレスによるダメージを受け
認知症がより進行してしまうからです。


たとえば、
フローリングにはすべり止め
トイレまでの道に障害物をおかない
段差をなくす

などです。


※ストレスを与えない環境も大事
環境が急激に変わると
脳が変化に適応できずストレスに。
引っ越しや模様替えをすることはNG。

脳トレ(行動修正)

犬も脳トレは大事なんです。
頭と体によい刺激を。

適度な散歩
適度な遊び
適度なトレーニング

です。

好きなこと喜ぶことを
を毎日コツコツ続けましょう。

ちなみに脳トレ用のおもちゃもオススメです。

おくすり

不安感を取るお薬、鎮静薬、漢方などがあります。

さきほどの3つの治療がうまく行かない場合に
お薬を使うことも。

獣医さんとよく相談を。

⑥痛み止めのくすりやサプリメント

いたみの症状はわかりにくいので、
痛み止めやサプリメントを服用してもらい
よくなるか反応を見ることも。

高齢で多い関節のいたみ対策には
アンチノールというサプリを
個人的にオススメ。

ヘルニアやこわい腫瘍でも
痛みがでることには要注意。

⑦原因である病気の治療

脳腫瘍の場合には治療がむずかしいのですが、
甲状腺機能低下症はお薬を飲むだけで
治療することができます。

4.犬の夜鳴きでやってはいけないこと

しからないこと

認知症によって夜鳴きをしている場合には
もっと悪化させてしまいます。

なぜなら、
ストレスが
認知症を悪化させるから。

夜鳴きをよくするためには
まず叱らないことが大切です。

放置しないこと

このブログのはじめでも言ったので
くどいようですが、、、

犬の夜鳴きがはじまったら
ゼッタイに放置しないで
獣医さんに相談して
早い対策をしてください。

認知症が最も多いので
進行して悪化してからだと
夜鳴きがよくなりにくいからです。

手がつけられなくなって
心身ともに疲れきった飼い主さんを
ぼくはこれ以上見たくないです。

ひとりでかかえこむ、無理をしすぎる

というのは、
認知症であれ、他の病気が原因であれ、
夜鳴きの改善には長期戦になることが多く
飼い主さんの労力をかなり使うからです。

実際に、
夜鳴きがはじまってから
1年以上付き合うことになることも多く、
飼い主さんの睡眠不足、
ご近所関係のトラブル、
で悩む方も多いです。

人の介護疲れと同じと思いますが
ひとりでかかえこまず
動物病院や
老犬ホーム、ペットシッターさんにも
ご相談くださいね。

5.動物病院にいつ連れて行くべきか

ここまでお読みの方であれば、
もうおわかりでしょう。

夜鳴きがはじまったら
なるべく早く一度ご相談ください。

なぜなら、
最も多い原因の認知症であれば
早ければ早いほど
治療の効果がでやすいからです。

また、
その他の病気であっても
早期治療のほうが
良くしてあげられる確率を高められます。

6.それでもよくならなかったら

できることは全部やったのに、、、
獣医さんとも相談したけれど、、、
認知症がかなり進行していて手がつけられない、、、

と、
困り果てたときには以下をオススメします。

専門医に相談する

獣医師の中にも
専門性を高めた診療をしている
専門医、認定医がいらっしゃいます。

とくに、
夜鳴きを含めた問題行動には
獣医行動診療科認定医への受診をオススメします。

最近では、
遠隔での相談ができることも。

http://vbm.jp/syokai/

引用:日本獣医動物行動研究会HPより

専門の施設にたよる

老犬ホーム
ペットホテルやペットシッターさん

どうしてもお困りの際にはご検討を。

老犬ホームはNHKの番組でも特集されるぐらい
全国的に増えています。

いろんな考え方があると思いますが、
お悩みなら
一度見学に行ってみて相談してみてはどうでしょうか。

悩んでいるのはあなただけではないですから。

防音のケージ

どうしても夜鳴きの声がつらい場合には
防音加工をしたケージや小屋があります。

治療を開始したばかりで効果が出はじめる前。

睡眠薬

ある意味最終手段です。

認知症の治療を始めたばかりの頃、
夜鳴きがすぐにおさまらないため、
使用することがあります。

ただし、
原因の治療ではないこと
むしろ悪化するリスク
がるので慎重に使います。

まとめ:どうするのが一番いいか

認知症で夜鳴きであれば、
早期発見、早期治療が一番です。

もし今お困りであれば、
少しでも早く獣医さんと相談し
適切な対策を始めていきましょう。

真面目な方ほど
ひとりで何とかしようとして
動物病院に相談するのが遅れてしまい
疲れてしまわないように。

飼い主さんがつらいのは
愛犬も望んでいないはずですから。

  • 犬の夜鳴きを放置するのは絶対ダメ
    認知症であることが多く、どんどん悪化して改善が難しく
  • 犬の夜鳴きの原因7つ 
    要求、不安感、寒さ、泌尿器のトラブル、認知症、いたみ、脳やホルモンの病気
  • 犬の夜鳴き対策は原因に応じて対処しよう
  • 夜鳴きをしているときには絶対しからない、放置しない、1人で抱え込まない
  • 夜鳴きがはじまったら早めに動物病院へ、早期治療が大事
  • ちかくの動物病院でも良くならなかったらどうするかも知っておこう