ウチの子が腎臓病と言われたけど
フードはどうすればいいの?
療法食に変えたほうがいいの?
おやつはあげていいの?
と悩んでいませんか。
この記事を読んでいただくと、
世界標準のガイドラインが推奨する
猫ちゃんへの腎臓病療法食をいつからあげた方がいいかが分かるようになります。
なぜなら、IRISという国際獣医腎臓病研究グループの2023年のガイドラインの原文に沿って解説するからです。
この記事では、
中高齢の猫ちゃんで、3頭に1頭以上と言われる慢性腎臓病について、
- 腎臓療法食の効果
- いつから腎臓病の療法食にしたらいいか
- おすすめの療法食
- 愛猫の腎臓病が心配な人、予防したい人向けのフード選び
- 療法食のデメリット
についてわかりやすく解説しています。
※IRIS(the International RenalInterest Society)とは
日本語で国際獣医腎臓病研究グループ。
IRISでは,2016年現在11ヵ国15名の獣医学専門家による理事会が主体となり, 犬と猫の腎臓病に対する臨床獣医師の診断,理解,治療方法を向上させることを目標として活動している。(日本獣医腎泌尿器学会HPより)
目次
そもそも、腎臓食はどれくらい効果あるのか
通常食と比較すると、2倍近い長生きを期待できます。
なぜなら、
科学的なデータとして生存期間中央値が
通常食 264日に対して、腎臓食 480日と
2005年に報告されているからです。
残念ながら、慢性腎臓病は徐々に進行していく病気で、根本的な治療法はまだわかっていません。
ただ、腎臓病療法食や他の治療法とにより長生きができるようになっています。
いつから腎臓病の療法食にしたらいいか
結論、
慢性腎臓病のステージ2以降(ステージ2〜4)、
または、
ステージ1であってもタンパク尿異常が見られる時、
とガイドラインに明記されています。
以上です。
そんなに複雑な基準ではないですよね。
療法食を選ぶかどうかは、
愛猫が慢性腎臓病なのか
どのステージなのか、
タンパク尿があるか、
検査をして正しく診断することが重要です。
大前提、正しい診断、正しいステージ分類
腎臓病療法食を始めるためには、ステージ分類がとくに重要でしたね。
ここでは、診断や検査、ステージ分類について解説します。
飼い主さんは、
どのステージかは、みてもらっている獣医師に聞けばOKです。
獣医師が実施、判断するものなので、この段落は飛ばしてもらってOKです。
勉強熱心な人向けに、診断とステージ分類について解説します。
大前提、正しく慢性腎臓病と診断
引用:IRIS HPより
当たり前ですが、正しい診断が大事です。
血液検査で腎臓の数値に異常があっても、慢性腎臓病とは限りません。
慢性腎臓病以外に腎臓の数値が上がると言えば、すぐに思い浮かぶだけでも、
飲んでいる薬の影響、腎盂腎炎、尿管結石、腫瘍、ユリ中毒、急性腎不全…
などなどあります。
正確な診断のためには、以下の検査を組み合わせることが重要です。
血液検査
- 腎臓に関連する主な項目はBUN、Cre、SDMAの3つ
- IRISガイドラインではBUNは無く、CreとSDMAのみ。可能なら2つとも測定した方が望ましい
- ガイドラインにおいて診断時の注意点あり
- 絶食下で測定
- 2つ以上の時点での比較をして判断
- 脱水していない、安定した患者の状態
さすがガイドラインといったところですが、
診断が間違わないように慎重に判断しなさいと獣医師に伝えているのだと思います。
血液検査の注意点
- やせてる、筋肉が少ないとクレアチニン低めに
- 過小評価に注意します
- 同じクレアチニン3.0でもやせている猫と太っている猫なら前者の方が評価が悪い
レントゲン、エコー
- 腎臓の形、大きさ、左右の比較をして異常がないか
- 慢性腎臓病以外の病気がないか見逃しや誤診をしないために必要な検査だと考えられる
- 腎盂腎炎、水腎症、尿管結石、リンパ腫などのガンで腎数値の異常もでるため
尿検査
- 比重検査
腎臓の尿の濃縮能力を見て、慢性腎臓病の判断材料に - 尿蛋白検査
- UPC(尿蛋白クレアチニン比)が重要
- 尿タンパクに異常が見られる子の方が予後が悪いため、検査をして異常なら薬や療法食を相談
血圧測定
- 慢性腎臓病になると高血圧になりやすい
- 血圧に異常に高ければ血圧を下げる薬を
- 血圧が高いままだと、腎臓をさらに悪くしたり、網膜剥離で失明することも
大前提、正しいステージ分類
引用:IRIS HPより
各種検査結果をもとに、次にステージ分類を行います。
おおよそ血液検査を参考にすることができます。
ただし、ステージ1だけが、ちょっとイレギュラーです。
ちなみに、IRISが作成したポケットガイドというわかりやすくまとまったイラストがあるので、
リンクを付けておきますね。(日本語版も、日本獣医泌尿器学会HPより引用)
ただし、ステージ1かどうか診断するのは、ちょっとイレギュラーです。
どんな病気も早期であればあるほど、診断は難易度が上がるものです。
ステージ1
クレアチニン(<1.6)やSDMA(<18)は健康診断でも問題ないと言われるレベルでも、、、、
以下の4つ条件のうち1つでも当てはまればステージ1
①正常範囲でもクレアチニンまたはSDMAが徐々に増加
②SDMA>14が続く
③レントゲンや超音波で腎臓の形態が異常
④尿蛋白の異常が続く
ステージ2
血液検査と尿検査の異常を検出します。
クレアチニン
1.6~2.8
SDMA
18~25
尿比重の低下
ステージ3
血液検査と尿検査の異常を検出します。
クレアチニン
2.9~5.0
SDMA
26~38
尿比重の低下
ステージ4
血液検査と尿検査の異常を検出します。
クレアチニン
>5.0
SDMA
>38
尿比重の低下
※サブステージについて
- 簡単にいうと、高血圧とタンパク尿もみてねというIRISからのメッセージと理解
- 高血圧
血圧測定して、お薬を始めるかを判断します。
- 尿タンパク異常
尿検査で判断、療法食やお薬を始める
- 高血圧
おすすめの腎臓病療法食と選びかた
結論、
何よりも食べてくれるかで選ぶことをオススメします。
なぜなら、
食欲が出ずどんどん痩せていくことが
慢性腎臓病の予後には良くないとわかっているからです。
ガイドラインでも食欲増進剤の推奨があるくらいです。
もちろん、リンの制限、タンパク質の制限がちゃんとされているか
成分が基準を満たしている信頼できるフードが前提です。
リンの制限、タンパク質の制限がちゃんとされているか、
自分が使ったことがあるものを紹介しますね。
※選ぶサイズは風味が落ちるので、なるべく小さめのサイズがオススメ
ロイヤルカナン
腎臓サポート
ドライタイプは、3種類形状がありますが、
好みにあったものを。
ウェットタイプのパウチは、水分もしっかり取れるので、ドライよりもおすすめです。
ただうちの子は食べてくれなかった、、、
- ノーマル
一般的な丸い形のカリカリです。
食べ慣れている形ならこちらから。
- セレクション
すこしモチっとした食感です。
猫が好きな香りがついていますが、僕にはわかりませんが好きな子もいます。
- スペシャル
小さめの角ばったカリカリです。
この形が好きな子も。
- ウェットタイプ、パウチ チキンテイスト
水分もたっぷり取れるのでオススメです。
チキン好きならこちら。
- ウェットタイプ、パウチ フィッシュテイスト
魚好きならこちら。
早期腎臓サポートは、、、ガイドラインでは蛋白尿がでてないステージ1でも今のところ推奨されていない
ヒルズ
k/d
ドライタイプはツナとチキンの2種
昔より美味しくなってる気がする。
食べたことないけど。
- k/d 腎臓ケア チキン ドライ
- k/d 腎臓ケア フィッシュ ドライ
缶詰タイプも。
お高めのシチュー缶シリーズは美味しいみたいです。
食べたことないけど。
ツナかチキンはお好みで。
早期アシストは、、、ガイドラインでは蛋白尿がでてないステージ1でも今のところ推奨ない
その他のメーカー
あと、使用経験があるのは、
ドクターズのキドニーケア、
サニメド
ピュリナ
からも療法食が出ています。
いろんな種類があるので、
飽きやすい子はローテーションしながらあげるのもオススメ。
慢性腎臓病と診断されていないけど、中高齢で腎臓が心配な人、予防したい人のフード選び
食べてくれるご飯でOKと考えています。
なぜなら、ガイドラインで推奨されていないから。
以上です。
ただ、何かできることないの?と思われる熱心な方へ向けてもう少し解説します。
中高齢で腎臓が心配な人
腎臓病が多いからといって、診断なしでは腎臓食にしないほうがよいです。
なぜなら、
慢性腎臓病ではない猫や、慢性腎臓病でも推奨されない時期にタンパク制限をしてしまうと
逆に健康を害するリスクもあるからです。
太めの猫ちゃんの方が長生きというデータもあるので、
ちゃんと食べてくれるフードでいいでしょう。
おすすめは、
早期発見のために定期検査を受ける、
慢性腎臓病のサインである飲水量が増えてないかや尿の色がうすくなるかどうかのチェックです。
予防したい人
残念ながら、慢性腎臓病の予防法はわかっていないのが現状です。
ただし、ウェットフードを多めにあげることをオススメします。
専門の先生の話を聞くと、
一部の慢性腎臓病には尿路結石が関与していると考えられ
水分量が少ないと、結石ができやすいためです。
お水をそのままたくさん飲む子は少数派のため、
ウェットフードからも水分をしっかりとりましょう。
食べてくれるなら、ドライをふやかしたものでもOKです。
腎臓病療法食のデメリット2選
正しく腎臓病療法食を使用すればとても効果がありますが、
2つデメリットがあります。
①食べてくれず、痩せるリスク
実は、腎臓病でやせている猫のほうが予後といって生きられる時間が短いです。
ガイドラインには、やせないように食欲増進剤の推奨もあるくらい、食べることは大事です。
食べてくれない場合は、早めに他の種類に変えたり、こだわりすぎないようにしましょう。
②タンパク質制限のリスク、腎臓病以外の子には良くない
腎臓食は成長期や、若くて健康な子には制限してはいけません。
必ず、慢性腎臓病の腎臓食が推奨される時期に。
なぜなら、腎臓食はタンパク質やリンが制限されている食事ですが、
体にとってとても重要な栄養素でもあるからです。
療法食は、薬と同じで獣医師と相談したうえで正しく使用しましょう。
よくある質問
- AIMって効果あるの?
- 2023年のガイドラインには記載がありません。治験が始まっているみたいなので今後の進展に期待したいです。現状は、今できること、確実性が高いことをやっていくしかないと考えています。
- ほかにやったほうがいい検査は?
- 慢性腎臓病治療中に以下の数値も見ておいた方がよいです。
- 血液検査
- 電解質、とくにカリウム
腎臓病が安定している時期でも低くなりやすいです。
- 電解質、とくにカリウム
- おやつはあげていいの?
- ちょっとならいいと個人的に考えています。
- なぜなら、猫は一度食べ出すと食欲がでて、ついでに他のフードも食べたりすこともあるからです。
- ただし、煮干しなどの小魚はリンがかなり多いため、やめた方がいいでしょう。
まとめ
- 慢性腎臓病の猫に、適切なタイミングで腎臓食すると2倍近く長生きを目指せる
- IRISガイドラインによると、ステージ2以降、または蛋白尿異常があるステージ1で腎臓食への変更が推奨
- 正しい診断とステージングが大事
- おすすめの療法食は、基準を満たした食べつきがいいもの、ウェットも
- 慢性腎臓病でないなら、ステージ1蛋白尿異常なしなら、腎臓食にするのは現在のところ推奨されない
- 腎臓病療法食にはデメリットもあるので獣医師と相談の上、選びましょう
最後まで読んで頂きありがとうございます。
どこかの猫ちゃんのためになれば幸いです。
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